birdの過去の案件を振り返りながら、映像制作をレベルアップするために辿るべき道を考えます。
こんにちは。虎太郎です。
思えばbirdも5年目。
最初は見よう見まねで始めた動画制作でしたが、今では多くのクライアントからお仕事を頂けるようになりました。
ただ、ちゃんと振り返ってみないといつどのようにして何が良くなり、今後は何をしていけばさらに良いものをつくれるのかわかりません。
今回は折角なので少しは皆さんのためになるものをと思い、うちの過去の動画を振り返りつつ、birdはどのようにレベルアップしてきたのかを考えていきたいと思います。
全作品を挙げるぞと思ったのですが腱鞘炎になりそうなので、あれタイピングでなるのって腱鞘炎でしたっけ、個人的に印象的だった作品を挙げています。
特に動画をこれから始める方、同業の方にとっては、「こんな感じで動画のプロダクションは成長していくのか。」と参考になる内容かなと思います。
初めからこのプロセスが分かっていればうちが4年かかったことを1年でやるのも不可能ではない、かも。
STEP1 一眼で動画を撮影する
まず最初はbirdの動画初仕事。
大阪の老舗包丁ブランド「實光刃物」さんのプロモーションムービーです。
最初のお仕事ということでとっても気合を入れて作った思い出があります。(今見ても気合が感じられる初作品です。)
このときは動画の経験が少なかったため、撮影は殆どが手持ちで、カメラはニコンのD600とD800、レンズはTAMRONの28-75mm F2.8で撮影していました。
包丁作りの際に飛び散る火花でレンズフィルターが溶けた思い出があります。
また、地味に2mのスライダーを自作するなど、最初から攻める姿勢がありました。
シュンタロウ(弊社代表)が出演している貴重な作品。(実はシュンタロウは元劇団ひまわりの子役です)
STEP2 単焦点レンズを使用
STEP3 Lightleaksなど、ポストプロダクションに目覚める
続いてはスマホで簡単にフォトアルバムが作れるアプリ「Clip」のPVです。
ここではまず、単焦点レンズを使用しています。
planarの50mmとシグマの35mmだった気がしますが、僕がやたら単焦点に拘った記憶があります。
撮影方法は相変わらず手持ち、ラストに短いスライダーを使ったカットがあります。
そして同じくラストにLightleaks(ライトリークス)といって、光漏れのキラキラしたエフェクトを入れています。
STEP4 インタビュー撮影に初挑戦
STEP5 グレーディングを意識する
家に置くだけで簡単に孫の顔がテレビで見れる、「まごチャンネル」のPVです。
開発者の梶原さんの熱意が素晴らしかったため、初のインタビュー入りの作品になっています。
カメラは変わらずニコンですが、このあたりからグレーディング(色作り)を模索しています。
色は作品のテイストを決める大きな要素なので、グレーディングにこだわるのは必須だなと感じた最初の作品になります。
STEP6 ドローンを初使用
続いては八王子にある多目的施設、大学セミナーハウスさんのPVです。
このあたりで弊社の設立メンバーの奥村さんがSkylink Japanというドローン関係の会社に転職し、birdでもドローンを使った作品を撮るようになってきます。こちらはその最初期の作品です。
特に建築物や風景をダイナミックに撮影するのはドローンでしか出来ない表現なので、これ以降birdの撮影ではドローンがなくてはならない機材になっていきます。
STEP7 メインカメラをSONYに変更
STEP8 ジンバルを使用開始
STEP9 ワンカット撮影に挑戦
お次はミュージカル「手紙」のPVです。
ここでカメラがSONYのα7Sに代わっています。伴って4Kで撮影出来るようになり、画質は飛躍的に高まりました。
今もα7SIIをメイン機として使用しているので、ある意味ここから3年間、使用ハードの画質は進化していないことになります。
また、カメラをブレないように移動する必要があったため、ジンバルと呼ばれるモーターでカメラのブレを制御する機器を使用しています。
このとき使用していたジンバルはDJI社のRONIN Mというもので、初めて持った感想としては「とにかく重い」に尽きます。現在はRININ Sという遥かに軽い機材が出ているので、非常に楽にブレない映像が撮影できます。すごいね。
STEP10 ドローンと地上を掛け合わせるbird基本スタイルが確立
STEP11 複数本納品に挑戦
次は山梨県さんのお仕事で、地元の食材を使ったレストランを紹介するというものです。
同様の形式で4本納品という、birdとしては初めての大型案件でした。
ドローンで始まり地上が続いてドローンで終わるという、ドローン×地上の基本スタイルが出来たのがこのときでした。
自分としては、ここでようやく「自分達は動画で食っていける」という自信が持てた気がしています。
グレーディングも安定感が増してきました。
また、4本納品という人数の少ない当時ではハードな編集でした。
STEP12 自主企画での撮影に挑戦
STEP13 編集のテクニックを洗い出す
SONYさんとのタイアップ案件で、世界的に活躍するDJ「DJ IKU」さんのコンセプトムービーです。
SONYさんのウェブサイト「α Universe」にインタビュー付きで掲載頂きました。
https://www.sony.jp/ichigan/a-universe/news/195/
こちらはまず自主企画で全ての構成を行ったことが挑戦でした。
shuntaroが仕事で知り合ったDJ IKUさんの姿勢に共感し、その姿を「求道者」に例えて構成しています。
アップテンポな編集は初めてで、どうすればかっこよく見えるか考えて編集しました。
スローからハイスピードへの切り替え、ちょっとした文字のエフェクト、AfterEffectを使った切り抜きなど、新たな技術を学べた案件でした。
STEP14 長期間の撮影に挑戦
京都のハウジングメーカー、S&G housingさんのブランディングムービーです。
家が建つまで半年以上を追いながら撮影するという、当時の弊社の中では最も大きい案件でした。
長い期間を撮影する上で注意しなくてはいけないのは、クオリティを一定に保つこと。
機材や撮影技術が「進化してしまう」ことが時にはその妨げになりました。
長い期間の撮影に、モチベーションの維持なども含めてどう当たるかということを学んだ案件でした。
bird第一期の集大成のような印象のある作品です。
STEP15 今まで学んだことを全部使った動画に挑戦
個人的にはbirdの出世作かなと思うのがこちらの作品。
横浜の金属加工メーカーさんが集まって、それぞれの特徴を生かしたフラワーベースを制作し、ミラノサローネに展示するという挑戦的なプロジェクトのプロモーションです。
ロケ、ポートレート、モデル、ブツと全部入りの内容で、birdの総合力が問われる案件でした。
工場は一社30分程度しか時間がなくバタバタでしたが、全てのクオリティを妥協することなく撮影しきった経験は自信を深めてくれました。
また、楽曲制作をGo Hiyamaさんに依頼し、音楽によって映像がここまで変わるということを実感できたのもこのプロジェクトが初でした。
編集がとても楽しかったのを覚えています。
ここから一皮むけて、bird第二期のような印象のある作品です。
STEP16 MV撮影に挑戦
上記でお世話になったGo Hiyamaさんの「Enbrace」のMVです。
自主企画で、しかもファッション要素のある撮影は初でした。
シュンタロウがイメージディレクターとして全体のイメージを統括する、という形式が確立され出したのがこの作品であると思います。
夜中初で早朝のロケ、時間のない中多くの素材を撮ることはできず、思い切った編集と合わせて「難産」なプロジェクトでしたが、とても思い出深い作品です。
STEP17 高難度ドローン撮影に挑戦
J-power(電源開発)さんのプロモーション。
とにかくドローンが過酷だった撮影。
気温マイナスの北海道で風力発電所を撮影するという高難易度案件です。
ドローンは風が強いと飛びませんが、風力発電所は風がないと回りません。
風車が回りつつドローンも飛ばせるという一点を狙った撮影。
発電所という安全リスクの高い場所でのリスクマネージメント。
ドローン撮影に関するノウハウが貯まった案件です。
STEP18 オーソドックスながら丁寧な撮影を追求
三橋サンブリッジさんのブランドムービー。
撮影自体は三脚+スライダーでシンプルながら、1カット1カットのクオリティを上げることに注力した案件。
空撮も静かな動きながら、印象をコントロール出来るよう丁寧に撮影しています。
整頓された工場の印象を動画に落とし込めた、シンプルな撮影でも良いものは作れると感じた案件です。
STEP19 大手企業ながら、緩急のあるアップテンポな編集に挑戦
BUTTERFLY QUALITY
三橋サンブリッジさんと同じ工場主体の案件ながら、一転、緩急のあるブランディングムービー。
卓球のラケット世界ナンバーワンメーカーということで、品格を感じさせながらもアップテンポな構成を目指しました。
Youtubeのコメント欄での卓球ファンからの温かいコメントを見て、作ってよかったと感じたムービーです。
STEP20 ハイパーラプスに挑戦
アーネストアーキテクツさんという超高級住宅メーカーのプロモーション。
動画はウェブサイトから。
http://earnest-arch.jp/
全編ハイパーラプスの挑戦的な案件です。
2日間にわたり、全6台のカメラでハイパーラプスを撮影して時間の移り変わりを表現。
実際にアーネストアーキテクツの住宅で一日を過ごしたらどのような印象なのかを感じて頂くのが制作意図になります。
全編ワンカット風の繋ぎと相まって、今までにはないテクニカルな撮影でした。
最終形を想像したカメラの配置、撮影設定など、考えて構成することを学んだ案件です。
STEP21 スチールの世界観の映像化に挑戦
シュンタロウのスチール作品の映像化。
ドローンを用いてライティングする「ドローンライティング」の先駆け的作品です。
スチール作品を同時に映像化するという新しい形で、スチールと映像の違いを改めて考える機会となりました。
STEP22 ドラマ風のプロモーションムービーに挑戦
ヤマハさんが運営するリペアマンの養成学校、管楽器テクニカルアカデミーのプロモーションムービー。
実際の生徒さんを役者として起用し、学校生活を経てプロになるまでのストーリーを描きました。
モデルや役者ではない実際の生徒さんで撮影することを考え、演技力に頼りきらないで済むようなコンテを考え、
フィルターワークなどで雰囲気を出して映像の質感を作ることを意識しました。
STEP23 ワンカットMVに挑戦
POLTAさんの疾走志願のMV。
ポップな曲調に合わせ、バスの中で撮影するという世界観を提案。
エキストラを多く集めた、当時のbirdとしては大規模な撮影となりました。
ワンカットに見える工夫を入れ、新たな構成にも挑戦しています。
STEP24 ジブを使った大規模な撮影に挑戦
消防団のCM。撮影のみbirdという珍しい案件です。
夜にビルの屋上でダンスという特異なシチュエーションの撮影。
ジブを使った大掛かりなワークで、屋上にジブレールを設置するなど準備が大変な案件でした。
いつものbirdのテイストから離れたものになり、とても思い出深い撮影となりました。
STEP25 インタビューを軸とした動画の集大成
水田除草機の革命「WEEDMAN」のプロモーションムービー。
インタビューを軸にインサートを配置していくタイプの作品の集大成のようなイメージです。
ドローンを寄り引き思い切って使った構成で、企業のプロモーションとしては異色の目を引く部分を意識的に作った作品です。
STEP26 ドローン×地上の長期案件
ソーラパネル投資事業のミナトマネジメントさんのプロモーションムービー。
ドローン×地上の集大成のような案件。
撮影自体はオーソドックスながら、全国5箇所に渡って確実に綺麗な映像を撮り続けなければならず、2018年の夏の時期、毎週金曜日はこちらの撮影という長期案件でした。
タイムラプスなどを織り交ぜ、正統派な映像美を追求して制作しています。
このような撮影は、birdとしてはかなり安定期に入った感を感じた作品でした。
STEP27 新メンバーが活躍する初案件
革小物ブランド「ke shi ki Leather products」のコンセプトムービー。
完全に僕(林)がノータッチの珍しい案件。
撮影は2018年5月加入の阿部くん。編集は2018年後期加入の主馬くん。
gloamingと同じく、シュンタロウのスチールの世界観をムービーに落とし込んだ作品です。
撮影・編集ともに、新メンバーが上手く機能しているとっても良い動画だと思います。
STEP28 bird全員一丸となってMVを撮影
GO STUPID!!!
主馬くんのディレクターとしてのデビュー案件。
自身もダンス経験者の主馬くんらしい構成と、ウィットに飛んだ結末がコンテの段階で一同面白い!となった作品です。
撮影はエキストラも多く使用した大規模なもので、birdはほぼ全員のフル稼働。
機材的にもblackmagicを導入するなど挑戦をしています。
新メンバーの活躍で、ここからbirdの第三期が始まる感じがしています。
STEP29 令和のbirdはどうなっていく?
いやーこんなにたくさん撮ってきたんですね。(今年の案件などはご紹介できなかったので、実際にはもっとありますが)
一部紹介しただけなのですが、改めて振り返ると結構あって自分でも驚きました。
振り返ってひとつ感じたのは、挑戦したときに成長するということです。
非常に当たり前のことですが、以前のテクニックを用いて同じものを作っていたのでは成長はないなと。
細かく見ても、挑戦して成長した案件と、精度を上げてクオリティ高くまとめた案件のふたつに分かれています。
挑戦→当たり前の技術になる→精度を高めた集大成→別の挑戦 のような流れの連続だなと。
と考えると、2018年の後半はやや集大成的な案件が多く、もっと挑戦していかないとなという気持ちが強くなりました。
2018年終盤には新メンバーがとっても活躍してくれ、次の扉を開けそうな感触が出てきています。
2019年(も既に半分ですが。。)、今後は以下のようなことに挑戦していくと思います。
新機材の使いこなし
2019年はメインカメラをblackmagicに変更し、raw撮影を基本にすることで、写真と同等の画作りが出来るようになります。
画質の面では飛躍的に向上するので、これがパッと見では最も大きい変化かもしれません。
グレーディングの深い習熟
raw撮影に伴って、グレーディングもより深く習熟する必要があります。
映画からヒントを得て、最上位レベルのグレーディング技術を磨き、映画に引けを取らない映像美を目指します。
受注型から提案型の制作へ
作りたい動画の大枠が決まった状態で受注するのではなく、より上流から制作に関わって、コンセプトから提案する機会を増やしていきます。
その際に、クライアントと共に考え、一緒に作っていくという姿勢を大事にしたいと考えています。
無難を良しとせず、より良いものにするためにbirdもクライアントも相応のリスクを分配するのが正しい体制だと思います。
分析と改善
僕個人としては、分析と改善をメイン業務としていこうと思っています。
良い動画がなぜ良いのかを分析し、法則に落とし込んだ上で新しい手法を作れたら最高です。
またそれを実現できるよう、個々人のスキルを高める手助けが出来ればなと思っています。
勿論自分がまず成長しないといけないので、この記事のような過去の振り返りと、未来の想像を繰り返していきたいと思います。
まとめたことで少しだけまた動画について理解できた気がします。
いつか本当に分かる日が来ることを信じて、これからも良い動画を撮っていきたいと思います。