最近、役立つ系のブログが続いておりますが、その流れをここで断ち切ります!
ということで、2018年4月までファッション業界で働いてきた、私、阿部大輔がこれまで見てきた中でもっとも衝撃を受け、記憶に残っているコレクションをご紹介!(ただし、自分がタイムリーに見てきたものに限る)
一体、誰のため、何のために書いているのか、それはまったく無意味なものになるのかもしれませんが、
どうぞ、お楽しみください。
2013 AW Saint Laurent(サンローラン)
https://www.vogue.com/fashion-shows/fall-2013-menswear/saint-laurent/slideshow/collection
Dior Hommeにて革命を起こしたエディスリマンの再来。
Saint Laurent の誕生だった。
かつて、21歳でDiorのチーフデザイナーとなり、「モードの帝王」とも呼ばれたイヴ・サンローランの名を冠したそのブランド名をサンローランに変更、ロゴも一新してしまうという、その男エディスリマンによる復活1stコレクションだった。
まず、何がすごかったと言えば、それはもはや Dior Hommeそのものだったのだ。
いや、そのコレクションは、サンローランでも、ディオールでもない、Hedi Slimane と言った方が早かった。
ほとんど、Dior Hommeとやっていること、色やスタイリングなどその全てが変わらなかったのだ。
けれども、ビタビタのスキニーパンツに、細身のジャケットを合わせたそのスタイルはいつになってもカッコ良いの一言に尽きる。
僕のスキニーパンツスタイルもかつてのDiorフィーバーからきています。
CHANEL、FENDIを長年引っ張ってきたあのカールラガーフェルドが、Diorのスーツを着たいがため、42kgの減量を成功させたほどに革命的なカッコ良さをファッション業界にもたらしたのだから本当にすごい。
2013 AW Saint Laurent は 「え、全く同じじゃん」「それでもやっぱりカッコ良い」という2つの衝撃を受けたコレクションだった。
2011 SS Raf Simons(ラフシモンズ)
https://www.vogue.com/fashion-shows/spring-2011-menswear/raf-simons
純白のセットアップやこれでもかというくらいに太いベルボトムパンツ、本当に綺麗に仕上げられたYラインやAラインのスタイリングが印象的だった。
1枚目の写真にあるような、ショーツと呼ばれる超ひざ上上短パンにクルーソックスを合わせ、革靴を履いてしまうこのバランス感覚の良さ。自分も真似したいと思いましたが、「座高に対して10cm近く足が短いよ」と診断されたことのある私には到底無理なスタイルだった。。
それでも何か欲しいなーと色々探し回ったのですが、当時は確か直営店は撤退していたり、伊勢丹もRaf Simonsの取り扱いをやめていて、実物を見ることはありませんでした。確か前年の蛇コレクションで滑ってた気がします。笑(https://www.eyesight.jp/blog/2009/06/28-182257.php )
それでもネットで色々見て、買えそうだったのは、1枚目の取り外し可能な付属ファスナーだけだった。5-6万してたと思う。笑
2012 AW Thom Brown(トムブラウン)
https://www.vogue.com/fashion-shows/fall-2012-menswear/thom-browne/slideshow/collection
2016 SS Rick Owens(リックオウエンス)
https://www.vogue.com/fashion-shows/spring-2016-ready-to-wear/rick-owens/slideshow/collection
この2つのコレクションは僕の知っているファッションという概念を超えてきた。
ちょっと待ってくれ。 ファッションとは、一体何なんだ。笑
そこで気付かされたのは、コレクションで発表されるファッション、オートクチュールやプレタポルテというものは、ただの服ではない。アート表現なのだろうということだった。
絵画や彫刻などの芸術と同じように、デザイナーたちの「表現」というものが、ファッションショー、コレクションという場では行われているのだろう。
そうでなければ、こいつらはただの阿呆じゃないか。
2010 SS Givenchy by Riccardo Tisci(ジバンシィ・バイリカルドティッシ)
https://www.vogue.com/fashion-shows/spring-2010-menswear/givenchy/slideshow/collection#1
こちらのコレクションは、単純にこのシャツが100万円だったことだけ、覚えてます。笑
2008年からリカルドティッシがデザイナーに就任して、ジバンシィはそれまでの特徴のない紳士ブランド(ただのおじさんブランド)から一転、めちゃめちゃカッコよくなったなーという印象です。
こうして見てみると、ブランドにおけるデザイナーの重要性は何よりも高いのではないかと感じてしまう。
上述しているブランドは、それぞれが自身のブランドだったり、デザイナーが変わった途端に売れ出したブランドばかりです。最近では、ヴァージルアブローのLouis Vuitton、デムナ・ヴァザリアによるBalenciagaがその最たる例だと思います。
2016 AW Balenciaga
https://www.vogue.com/fashion-shows/fall-2016-ready-to-wear/balenciaga/slideshow/collection
抜き襟や肩出しスタイルは今でこそ、普通になりましたが、最初にBalenciagaがコレクションで発表した際には衝撃的でした。それから業界ではこぞって、抜き襟祭りでした。シャツ、ブラウス、Gジャン、ブルゾン、コートと、もはや抜いていない襟はなかったと思います。
ファッションのトレンドは、よく、「作られたもの」 と言われています。確かにファッション誌やコレクション誌、WWDなどの業界紙での情報操作みたいなものはあります。
しかし、「本当に良いもの」 というのは、一目見れば分かったりするもので、このコレクションが発表された後、社内でもすぐに話題になっていましたし、確かに奇抜かもしれないけれど、その中にも揺るがないカッコ良さ、可愛さがありました。
ファッションの仕事は感覚ではなくて、分析や数字だとか、トレンドを読み解く力だとか言われたりします。確かにそういった能力が必要なのは間違い無いのですが、しかし、感覚がなければ絶対に出来ない仕事だとも思います。
写真や映像の世界も同じかもしれません。
良いものなのか、悪いものなのか、説明や御託は幾らでも並べることは出来るし、それでっぽく見せることだった出来ます。
しかし、心が動くモノというのは説明無しにだって、「すごい」と思えるのです。
紹介してきたコレクションは僕がファッション業界に入って間もない頃のものが多いです。
これは僕のファッションに対する純粋な興味や感覚が高まっていた時期だからだと思います。 以降は仕事としてコレクションをみるようになってしまい、服に対する興味が薄れていっていたことの表れかもしれません。
今、居る場所では情報取集も欠かさず、感覚を研ぎ澄ませていきたいですね。