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ファッション写真って何? -日本ファッション写真の歴史- その1

shuntaro

原宿のThe Mass(ギャラリー)にて、Nick Knightの日本初個展「still」が開催される、というニュースを先日知って、心躍った。

http://fashionpost.jp/culture/culture-art/147599

 

Nick Knightは言わずと知れた(少なくとも、フォトグラファーの間では)、著名ファッションフォトグラファーである。
彼の作品はその美しさ、かっこよさだけではなく、時代を先どる表現にいつも挑戦していて、まさに「ファッションフォトグラファー」という肩書きの似合う写真ばかりである。
その写真の多くは、80年代以降、ずっと世界中のフォトグラファーに影響を与え続けているが、僕自身もその中の一人だ。
大学生の頃、建築やインテリアではなく、デザインでもなく、写真という媒体を自分の道として選ぼうかな〜と思っていた時に出会ったのが、Nickの写真集だった。
特にYohji Yamamotoのファッション写真の色、シチュエーション、構図の完璧さに心惹かれて、ファッションフォトグラフィーという分野への興味一入だった。

Nick Knight「Yohji Yamamoto」1986

そこからの僕の写真人生では、ファッション写真という分野への興味が最も強い。
今に至っては、自分の得意分野である静的な写真表現が、現在のファッション写真のスタイルとあまり結びつかないことは知っているが、それでも、チャンスが来たらそういう分野の写真を多く撮りたいという気持ちはある。

そもそもファッション写真、というものを初めて知ったのは、遥か昔、自分が子供の頃だったように思う。
父がマガジンハウスのカメラマンだったこともあり、家にはananやGINZA、POPEYE、OLIVEといったファッション雑誌が毎週たくさん届いていた。
そこに載っていた写真を小さい時からたくさん見ていたので、当然、ファッション写真をたくさん見ていたことになる。
ただ、上記のような再発見に至るまで、自分の中でファッションの分野はそこまで興味のある写真ではなかった。
当時の服にとって興味があったのは、完全にインテリアだったからだ。
なので、取ってあった雑誌も、インテリア特集とかばかりだった。
子供の頃からこういう環境にあったにも関わらず、ファッション写真という分野でのキャリアは育たなかった、というか、
今も変わらず、結局は静的な表現、モノの組み合わせや空間の方がファッションより好きなのであって、
結局はそういう分野の写真ばかり撮っている、と思う。
三つ子の魂百まで、っていうことだ。
まあ、ファッションフォトグラファーの中でも、アヴェドンよりペン派なので、その辺は一貫している。
ただ、こうしたバックグラウンドは、これから書こうとしていることには大きな影響を与えたのは間違いない。

父(細川俊 / Ryu Itsuki)による、80年代のanan時代の写真

さてさて、前置きが長くなったが、ブログの連載ということで、ファッション写真、それも日本のファッション写真史に関して、全何回になるのか分からないが、書いていこうと思う。
なぜこれを書くのか。
それは、このテーマが僕の博士論文のテーマであり、せっかく研究したんだから世に出したい、というやや不純な動機が1つ。
それから、上記のような背景に後押しされるような、純粋な個人的な分野への興味、自分の作品制作のためのリサーチの側面が1つ。
最後に、この分野は、全く研究対象として写真の世界で体系的に研究されてこなかったからである。
もちろん、各論では論述もされているし、何より近年の話なので、実体験を持っている人間が生きているから、歴史になりきれてなかった、ということもある。
でも、分野の始まりから100年弱が立ち、そろそろ誰かがまとめないといけない時期に来ていた。
それを自分がやり始めた、という訳だ。

このテーマでリサーチを始めたのが、4年前。日本大学芸術学部の博士課程に入学した頃だ。
そもそも、僕の修士でのリサーチは、アイデンティティとポートレートに関してのリサーチで、それに関連した作品を制作していた。(/slash という作品。http://www.shuntaro.co/slash
で、博士課程では浮世絵の構造の分析と、写真への応用的な話を入り口に何か探ろうかと思っていたのだけど、日芸に入る際のブリーフィングで話しているうちに、なぜかファッション写真を研究することになったw
まあ、浮世絵だと分野的にはイラストレーションなので、そういう問題もあった。
ただ、日本のファッション写真の歴史をまとめた研究がない、ということを聞いたときに、これは面白いかも、と思ってしまったのだ。
なので、4年前に始めた時から、本当に手探りで研究してきた。
今後は、その軌跡を追いながら、考えたことをまとめていきたいと思っている。

ファッション写真、と聞いた時に人々が思い浮かべるのは、十中八九、モデルが洋服を着てポーズを決めている写真であろう。
それ自体は間違っていない。
大正解。
洋服を写している写真、それも人が来ている洋服を写しているものがファッション写真の王道である。
でも、ファッション写真という分野の中には、モデルがヌードの写真もあれば、切り取られたり、ブレてたり、暗かったりして、何が何だか分からない、洋服のよく写ってない写真も存在する。
もう1つ。
洋服を着たモデルがポーズをとっているインスタの写真は、ファッション写真なのか?
ポートレートではないのか、スナップじゃないのか、、、
プロが撮ってないからファッション写真ではない?
であれば、プロの撮影した名作のポートレートは、ファッション写真たり得ないのか?
また、例えばECサイトの着用写真はファッション写真に違いない特徴を持っているが、
それを撮影している人をファッションフォトグラファーと呼ぶのには抵抗がある人も結構いるのではないか。

じゃあ、一体全体、何をもって「ファッション写真」という分野・写真を定義したら良いのだろうか?
まず、研究の始めにこれを明確にしないことには始まらない。
そもそも、これが分かってないと、歴史の起点となる時点が明確にならない。
後述するが、そもそもファッション写真という分野は、ポートレート写真やスナップ写真と地続きに始まっている。
なので、どの人をファッションフォトグラファーの始まりにするかは、特徴を明確にしなければ特定できないのだ。
そう、第1章は「ファッション写真って何?」という素朴にしてとんでもない難問に対して、僕なりの答えを出すことから始まる。
のっけから、超難問である。
で、それを答えるには、そもそも、ファッションって何さ、ってことにまで話が及んでしまうので、
とりあえず、また次回。

Nickの個展、来週行こうっと!

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