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鳥と虫の声 vol.4「birdっぽくない二人」

the voice of bird and insect
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ディレクターの桜屋敷知直。 愛称は「屋敷さん」とても珍しい名字だけど「桜」を端折られがち。
コピーライターの杉浦巧。下の名前で呼ばれることがあまりないので、もっと「巧」を広げていきたいらしい。
二人の会話に耳を澄ますと、いつも「あまり声を大にして言えない裏側の話」が聞こえてきます。
“こんな人もbirdにいるんだ”と外部の方から言われることが多い二人であります。
そんな彼らは、ディレクター/コピーライター「0から1」を生み出すポジションに就いています。
しかし仕事をしていく中でお互いの発想方法が少し違うかも?と感じていたようです。
今回は彼らの生い立ちや、日々の制作に対する向き合い方まで、それぞれの「クリエイティブの源」を探ってみました。

鳥と虫の声 Vol.4
桜屋敷知直 2017年入社 ディレクター
杉浦巧 2021年入社 コピーライター

 

本日はよろしくお願いいたします。(アシスタントディレクター小川くん)

屋敷 / 杉浦:よろしくお願いします。笑

屋敷:何から話そうかね〜

杉浦:ん〜、そうですね…。屋敷さんって、ちょくちょく「俺まだ中二病」って、言うじゃないですか。

屋敷:はいはい。笑

杉浦:でも実際に屋敷さんの幼少期のことを、詳しく聞いたことないなーって思ったので、お互いの生い立ちとか、この仕事に就くまでの話とかしますか?

屋敷:そうですね。二人の生い立ちとクリエイティブの原点ということで、話していきましょうか!まず自分のことから話すと、僕はクリエイティブな世界とは何の関わりもない10代を過ごしてますね。

杉浦:そうなんですね。

屋敷:うん・・・まあ普通に生きてきたってことなんですけど、唯一これは多くの人と違うかなって思うのが、転校を繰り返していて小学校が3回変わってることですかね。

杉浦:へ〜!それは初耳でした。かなり珍しいですね。

屋敷:小学1年生、2-3年生、4-6年生っていう感じで学校が変わった結果、
どんどん自分の意見とか本音とかを表に出せなくなってしまって、「内に秘めてる」ような子どもになっていっちゃったという…。

杉浦:それは確かに、そうなりそうですね。笑

屋敷:そうそう。だから、ものづくりとか表現する時の考え方は、世界の「表側」じゃなくて「裏側」にあるような「ぶっちゃけこうだよね」ってことを見つけることが多い気がする。

「ぶっちゃけこうだよね」っていうのは…つまり?

屋敷:例えば、まだ世の中には受け入れられてないけど「本質」を突いているようなこととか、あまり声を大にして言えないようなことを、なんとか少しだけ表現に入れたいっていうのが、あるのかもしれないです。

杉浦:ああ、わかります。僕も、どちらかと言えば僕も幼少期は「内に秘める」タイプでした。

屋敷:へぇ!ちょっと意外。

杉浦:自己表現が苦手で、相手の目を見て話せないし、挨拶とかもできない。親戚とかに「こんにちは」って言われても照れて返事できないみたいな。でも、それが小学生のときに、クラスで出し物とかをする「お楽しみ会」みたいなイベントがあって、母親から仕込まれた手品みたいなのを、緊張しながら披露したんですよね。そしたらバカウケで…「自分が何かやったことに対して反応がある」っていうのが、めちゃくちゃ気持ち良くて、そこで何かが変わったんですよ。

屋敷:ほうほうほう・・・笑

杉浦:それで、自分が「内に秘める」タイプだったことも忘れて、小学校6年生の時なんかは生徒会長もやってました。「自分が何かやったことに対して反応がある」ことが楽しいっていう成功体験から、気づいたら「主導権を握りたい」って欲望に変わってるんですよ。

屋敷:すっごい考えてる子どもだ。笑

杉浦:でも、生徒会長になったとしても、小学生のときなんて運動神経の良いやつに勝てないじゃないですか。人気とか。笑

屋敷:わかるわかる。ぶっちゃけね。笑

杉浦:勉強ができなくても、面白いことが言える子とか、足の速い子とか。それで、「なんか今のポジション面白くないな」って小6から中1にかけてくらいで気づくんです。それで、もう一回「内に秘める」の世界に戻ります。

一同:wwwwww

杉浦:でもそこから、自分とか世の中を俯瞰して見れるようになって、屋敷さんの言う「ぶっちゃけ、こうだよね」みたいなことに僕も気付けるようになったというか、敏感になっていきました。笑

杉浦さんは当時から、そういうことを考えて行動してたんですか?

杉浦:そうですね。すごい恥ずかしがり屋さんから、生徒会長になるっていうのが個人的にはとてつもない飛躍だったので、このまま行けば世界征服も夢じゃないかもなって思ってました。

屋敷:やばいやばい。笑

杉浦:でも、誰でも一度は考えることありませんか?格闘技みたいなことで、世界チャンピオン?になれるくらい強くなりたい!だったり、総理大臣になりたい!みたいな。特に明確な夢や目標もなかったんですけど。

屋敷:たしかに。。そんな野心あったかもしれない・・・心の奥底で思い出してきた。。

杉浦:そうですね。そんな感じで10代を過ごしてきたんですが…高校3年生の時、忘れもしない「東日本大震災」が起こるんです。それで、流れてくるニュースとかで毎日悲しい気持ちになってたんですけど、しばらくすると、”いまこそ頑張れ日本!”みたいなコンセプトのCMとかを、いっぱいテレビで観るようになったんです。僕は被災者じゃなかったけど、すごくいいもの観て、なんか「ドワーッ」って来たんです。そこから広告って、こういう使い方ができるのか〜ってことを、急速に理解するんです。すごい走馬灯みたいな速度で、心を掴むってすごい!これだ!って。
ぼんやりしてたことが明るくなって、「こんなことして生きていきたい」みたいな、今まで興味なかった広告クリエイティブの本質を一瞬で理解した瞬間でした。学校のテストみたいに勉強すればするほど良くなるものでもないから、今からでも遅くないかもしれない。自分がしたかったのは世界征服じゃなくて、これかもしれない!と、18歳の時に思って、それを叶えるため美術大学に行ったんです。笑

屋敷:そうだったんですね…!大きな出来事だったよね。それをきっかけにクリエイティブへ向かう人がいるというのが希望を感じるなぁ。僕は杉浦くんとは似てるけど対極な感じかもしれない。

杉浦:聞きたいです。

屋敷:小学校1-2年の時とかまでは結構やんちゃな悪ガキだったけど、転校してからは空気みたいな存在になっちゃって。何も大きな目標とかなく、ただひっそりと過ごしてて。最後の転校ではついに友達の作り方もわかんなくなっちゃって。笑

杉浦:やんちゃなだけですよね多分。悪の心があるわけじゃなくて。笑

屋敷:そうそう、無邪気。無邪気。(そう信じよう)そのあと、中学高校でも相変わらず友達の作り方が下手で、朝のキンコンカンコン〜のチャイムで先生が教室に入ってくるのが8時40分だったんだけど、その前に教室着いちゃったら話す人がいなくて、トイレとかでギリギリの時間まで隠れてたような人なのね。授業と授業の間の小休憩時間なんて誰と話していいかわからなくてもうドキドキして過ごしてた。

一同:ええ・・・!

屋敷:それで、そういう過ごし方してたらどんな感じになるかっていうと…中学高校の時ってヒエラルキーのトップにいるキラキラしてる人とかが、たま〜に仲間はずれにされるようなこととかってなかった?

杉浦:あ〜!!

屋敷:「どうしちゃったの?きみ…」みたいな。笑

杉浦:ありますね〜。笑

屋敷:ハブられた人の拠り所というか、受け皿みたいな存在になってた。でも時間が経つと、その人はまたキラキラグループに舞い戻っていって、俺はまた一人になる。…そういう感じの10代でしたね。笑

杉浦:なんか映画っぽい。笑

屋敷:つくる仕事をする人って僕らも含め、もともと「内に秘めてる」人が多いのかな? 内に秘めてきたことを大人になって爆発させるみたいな。

杉浦:それは、あるかもしれませんね。笑 …なんか日本って割とまだルッキズムというか、可愛いことが正義みたいなことだったりとかがあるじゃないですか。

屋敷:はいはいはい。あるね。

杉浦:僕は、例えばテレビで売りだしている物とか、可愛いタレントとかアイドルとか、今これが流行っているらしいぞ!みたいな物に乗ったことが、たぶん1回もないんです。(10代の頃は)

屋敷:ほー、マジか!

杉浦:なぜそれが流行り始めたのかっていうことの裏側とか、誰が一番最初にそれを始めてそうなったんだろうとか、なんか乗る前にすごい考えちゃって。純粋にその楽しいだけを受け入れられなくて。カワイイ・カッコイイだけで、よく熱狂できるなと。笑

屋敷:あ〜それもすごいね。

杉浦:例えば、AKB48が流行った時に、AKBって秋元康がプロデュースしているじゃないですか。でも、AKBやる前におニャン子クラブやってるじゃないですか。だからAKBで「わーい!すごーい!」言ってる人たちは、秋元康が手がけてきたものの凄さを理解した上で好きなんかな?とか、内に秘めて思ってたんですよ、その当時は本気で。笑

屋敷:お〜。笑

杉浦:「お前ら、おニャン子クラブ知らねぇのかよ!」みたいな。まあ、俺も別に知らないけど、熱狂するならちゃんとその文脈を理解した上で熱狂してんのかよ?オラ!みたいな。内に秘めてるから言わないっすけど。笑

屋敷:大人すぎん??笑

杉浦:って割と思ってて。笑 ただ、それを受け入れられることへの、ちょっと羨ましさもあったんですけどね。

屋敷:ごめん・・・俺めちゃくちゃ素直に受け入れちゃってたけどね、AKBとか。笑

小川:www

杉浦:当時ですか?笑

屋敷:うん。笑 握手会とか言ってたし。松井玲奈さんに握手会で「いつか映画撮るんで出演してください」って言ってたもん。

一同:wwwww

杉浦:いや〜、でもだんだん近づいて行ってますよ、確実に!笑

屋敷:だんだん、近づいてるね。笑

一同:www

屋敷さんにも、「クリエイティブの源」になった明確な出来事って、何かあったりしたんですか?

屋敷:これは自分のブログか何かに書いたかもしれないけど…「映画好き」ってところがベースにあるのかなぁ。あと、子どもの頃からドラマも好きだったし、出てくる俳優さんとかがすごく羨ましくて「同じ人間なのに、俳優さんたちはなぜこんなにもいろんな人生を経験できるんだろう、めっちゃ良いじゃん」ってずっと思ってた。

杉浦:最初は、演じる側に憧れがあったんですね。

屋敷:そうそう。それから色々あって、21歳のとき箱根の山奥でバイトしてるときに、休日は暇だから小説や雑誌をたくさん見るようになって。
当時、最も俳優さんにフォーカスを当ててた雑誌があって、映画に出演している俳優さんを取り上げてる記事が「めちゃくちゃかっこいい」と思ってかなり影響されてね。俳優になるのは無理だろうと思っていたから、カメラマンとか雑誌のライターとかになろうと思ってその出版社の面接を受けてアシスタントに入るっていう。

杉浦:行動力、凄いですね。

屋敷:もうとにかく俳優さんに関わることができる仕事をやろうって思って。それくらい俳優さんたちと関わりたいなって思ってて。いま考えてみれば、それが一番のクリエイティブの源かな〜。でも、そのあとは1週間くらいでバックれちゃうんですけどね。笑 本当に申し訳ないです。。

杉浦:わ!急で、びっくりした!

屋敷:合わないと思ったらやめてしまうという。。とにかく生き急いでいた。。あのときは。 杉浦くんは、映画とかドラマは好き?

杉浦:好きですよ。でも僕は、演じてる俳優さんへの憧れとかはあんまり感じたことがないし、名前とかも全然覚えられないんですよね。映画やドラマは、自分から観たい!と思って観るものだと思うんですけど、広告ってそもそも観たいと思ってないものが、コンテンツの合間とか路上に突然現れるじゃないですか。そんな状況下で、どんな言葉で「振り向かせようか」って考えることに、僕は燃え上がります。
そもそもが、広告とかCMが自分の「クリエイティブの源」なので、確かに屋敷さんとは対極なのかもしれない。とても大事なことを、どれだけ簡単に短く伝えられるかっていうことが僕のクリエイティブなんですよね。なんか”振り向かせる”に近いじゃないですか、広告って。映画とかドラマとかってやっぱり観たいと思って観るものですけど、僕はみたくないものをみせることの方が好きなんですよね、燃えるというか。

屋敷:お〜なるほど〜!みたくないものをみせる、ね。

杉浦:みたくないものを気づいたらみちゃってた、とか。 僕がすごい好きなのが、食べ物の好き嫌いがある人とかに、「それってもしかして本当に美味しいやつを食べたことないから嫌いなんじゃない?」っておいしいお店でそれを一口だけ食べさせた時に、「おいしかった!食わず嫌いだった!」ってなって、「ほらね、そうでしょう!」ってなるのが好きなんですよ。
絶対に良いのに〜ってものを、どうやってこの人に良いと思わせるかみたいな。すごく近い友達とか親とかそれぐらいの距離感でもいいんですけど「どう説得しようかな」ってことに基本的にすごく燃え上がるんで、そういう意味で広告を作るみたいな考え方はすごく性に合ってるんじゃないかなって思ったりします。

屋敷:コピーライターすごく合ってるじゃん!

杉浦:だから尺の長〜いものを作ることはちょっと苦手なんです。笑

すごく腑に落ちますね。

屋敷:なんかかっこいいわ。ストレートで気持ちいいし。 観たいわけじゃないものを、なんとかして観てもらおうっていうことね。”振り向かせよう”…か。俺もその文脈で答えるとすると、”気づかせる”っていうニュアンスが近いというか、好きかもしれない。

杉浦:確かに屋敷さんから「いま諭されてるかも」って思うことありますよ。笑

屋敷:まじっすか。笑

杉浦:なんて言ったらいんだろう。「別にどっちでもいいよ」って言うのに、屋敷さんが心のなかで望んでいる方の選択肢に、なんだかんだ最終的に流されていく気がするんですよね。

一同:wwwww

屋敷:確かに「どっちでも良いよ」って、よく言うね。笑 本人が選ぶのならどっちでも良いんだけど、”あなたにとって得なのはだぶんこっちだよ”っていうのは遠回しに伝えたいかもしれない。決めつける言葉が嫌いだからそうなっちゃうんだと思う、たぶん。自分の意思はあるけど、さりげなく選択肢を用意したいというか。そういう言い方はプライベートでも仕事でも意識してるかもしれないな〜。だから最終的には「屋敷が言ったから」というより、自分で判断して決めたことにしてほしい。

杉浦:そういう表現だったり企画とかにも、そういう自分のスタンスというか姿勢って出ますよね。

屋敷:まあ確かに、「どっちでも良い」って俺よく言うのよ。でも全然どっちでも良くないんだけどね、本心は。本人が選ぶならどっちでも良いんだけど、あなたにとって得なのは絶対こっちだよねっていうのは、なんかちょっと遠回しに伝えたりしてるかな。笑

杉浦:そうですよね。なんか長期戦が得意そうですね。笑

屋敷:あ〜そうだね。おれは今までの経験上、多分普通の35歳よりかは、ちょっと変な人とか多くの人と交流を持ってるっていう自信があって、いろんな職場を転々としまくってるっていうのもあって。そういう経験からか、決めつけた言葉を言うのが苦手というか嫌でね。自分の意思はあるんだけど、さりげなく選択肢は用意してあげたいというか。そういう言い方はプライベートでも仕事でもやってるかもしれないな〜。

杉浦:なんかナチュラルにリスク回避できてる気がします。「こうやれよ」って言われて失敗したら、「お前がこうやれって言ったからじゃないか」って思うじゃないですか。でも(屋敷さんからは)「こうやれ」って言われた覚えがないから、自分の責任にするしかないな〜みたいな。笑

屋敷:そう、卑怯なの。笑 だから最終的には桜屋敷が言ったからってよりかは、自分で判断したからっていうような動線には持っていきたいんかな〜って言うのはあるね。

杉浦:それはすごいですね。・・・全然関係ない話になるんですけど、このまえ屋敷さんがTwitterで、「この歳になって母親からごちゃごちゃ言われるようなことがあったら縁を切りたくなる」みたいなこと言ってたことありますよね?

屋敷:はいはいはい。

杉浦:なんかあれ見た時に、屋敷さんは自分の納得の上で物事を進めないと気が済まないんだろうな〜とふわって思って。だから今の話で、自分の物事の決め方、人にこうしろって言われて流されてこなかったから、どっかで自分が納得して決めた方がいいよって思ってるのが、そのまま相手に伝わってるのかなと思いました。

屋敷:そうだね〜。色んなことをやってはすぐ辞めてしまっていたのだけれど、そうしてきたのもちゃんとした理由があって。人生短いから、バイトでも我慢してやってる時間がもったいないと思って。そういう辞めるサイクルを繰り返すほど、最終的に自分が理想とする職場って絶対見つかるんだよね。

杉浦:わかる〜!

屋敷:そうゆう結果が自分の中でできちゃってるから、調子乗ってるのかもしれないね。 しかもね〜・・・勢いよく辞めた時ってめっちゃ天気いいの!

一同:wwwww

屋敷:これ本当に100%!笑 何でこんなに天気は応援してくれてるんだろう、きっと正しいことなんだろうなー!、と。まあだから、小川くんが今はbirdの社員を目指してやってますが、小川くんがバックレてもおれは何にも思わないと言うか・・・(※小川くんはそんな人ではありません)

一同:wwwww

屋敷:そういう気持ちで、いつもいる。笑 だから誰がバックレても全然責める気にならない。

杉浦:すげー!かっこいー!

屋敷:杉浦くん、全くカッコよくないですよ。笑 なんか、バックレてもいいけど、前のめりでバックレてくれたらいいなとは思うね。

杉浦:あ〜。大手を振ってというか。

屋敷:そうそう。「ふざけんなよ!」とか絶対思わないもん。笑

杉浦:すごいな〜でも、ふざけんなよとは思わなくても、寂しいなとか思わないんですか?

屋敷:いや、寂しさよりも応援したい気持ちの方がでかいかな。

杉浦:すっげ〜。笑

屋敷:もう自分がそうだったからね〜。ちょっと方向戻しましょうか。笑

杉浦:はい。笑

お二人の発想の仕方や、いま言われていた制作に対する「スタンス」のようなものをお聞きしたいです。

屋敷:そうですね、ディレクションとコピーライティングについて話しましょうか。
うちの会社って、photographerだったり、cinematographerがいるけれど、”カメラマン”って見えるものに対してクリエイトしていくじゃないですか。要は撮影する対象があって、それをいかに美しく撮るか、見えている世界をどう撮るか、みたいな。

杉浦:うんうん。

屋敷:それに対して、ディレクターとコピーライターって、見えない・カタチのないとこからつくるみたいなところが共通点かなって思っているんですけど、どうですか?

杉浦:確かに、そうですね〜…カタチのないところからですね。

屋敷:杉浦くんは、どうやってコピーを作っているの?

杉浦:僕は、”発見する”って感覚が近いですね。確かに何もないところからつくっているんですけど、心を動かすような題材を調べたり、想像して空想の世界に探しにいく感じです。

屋敷:なるほどね〜・・・(いちいちかっこよくて惚れるぜ・・・) おれは割と積み重ねていくっていうか、まず企画を作る時大事にしてるのが、クライアントさんの表現したい題材があったら、その題材にまつわる気持ちみたいなのを色々出していくような感じ。積み重ねていくような感じですね。だから、ボーンって一気に飛躍して「アイデア発見!」って感じより、クライアントさんの気持ちを考えつつ、ミルフィーユみたいに重ねていくことが多いね〜。

杉浦:(み・・・ミルフィーユ・・・)クライアントさんたちの「想い」って、すごく大事にすべきだと思うんですけど、ときどき「なんでこんなものにお金かけちゃったんだろう」みたいな、残念な制作物って割と世の中あるじゃないですか。「寄り添った」というよりも「言われるがまま」になった結果、効果的じゃないものができあがってしまうみたいな。

屋敷:そうだね。そこの塩梅って難しいよね。そこの塩梅を探っていって効果のあるものや、かっこいいものをつくるのが腕の見せ所だよね・・・! でも時には寄り添い寄り添い丁寧につくっていくことだけじゃなくて、杉浦くんのさっきの話で言っていた「みたくないものを、みてもらう」ためには、ある種、強引だったり記憶に残るようなインパクトも大事だな〜って思ってそれはそれで反省したりもする。

杉浦:そうですね。

屋敷:大事なことだと思う。逆に俺は大人しすぎるっていうのはあるかもしれない。サッと気づかせてあげる系の企画をよく考えてしまうんだけど、人への物言いも、「これやれ!」じゃなくて、選択肢を与えつつ、気づかせてあげたいのが出ちゃってるな〜。

杉浦:”気づかせてあげる”っていうのは、なんか、なかなか・・・。当たり前なんですけど、その絶妙なラインは考えたことなかったですね。僕はそこで止められないですね、「おい、気づけ!」「ほら見ろ!」みたいな。本心は。笑

屋敷:似てるようで本当に対極なうちら!!笑笑

杉浦:少し話は変わりますけど、屋敷さんは”クリエイティブにおける良し悪し”ってどうやって判断してますか?これ絶対にいいなって思う、自分の感覚に当てはめて考えてみたけど、時間経つとイマイチだなってことあるじゃないですか。あれって、なんなんですかね?笑

屋敷:そうね〜。自分の中で、いいクリエイティブだなって思う、キーワードは、”無理してない”ってことかもしれない。

杉浦:あ〜、わかる気がします。

屋敷:”無理してない”って言うのは、ブランドにある強度みたいなもので、例えば、”ハイブランド”のクリエイティブって、普通ならちょっと無理してるなってレベルの表現まで耐えられるじゃんね。ブランドの無理してない上限値ギリギリのところで抑えられている広告は、すごく良いな〜って思う。その強さのパラメーターを超えて、無理してるって思っちゃったら「やっちゃってんな〜」って、ちょっと思ったりする。

杉浦:普段あまり服に興味ないのに、めっちゃ着飾っちゃった人みたいな。笑

屋敷:そうそう。笑

杉浦:着られてる感って、なんか出ちゃいますもんね。

屋敷:着てる時は「今日イケてるわ」みたいな。で、いざ街に出て世の中に触れた時に「あ・・・これヤバくね?!」みたいな。笑

杉浦:クリエイティブに着せられちゃったやつですね!

屋敷:っていう感じかもしれないね。自分でも「やっちまったな〜」とか「背伸びしちゃってんな〜」みたいな経験あるし。だから、そのバランスは気をつけたいところだよね。バランスがすごく難しいよね。クリエイティブ。

杉浦:バランスいいものって、やっぱりセンス感じます。

屋敷:そうだね〜。

杉浦:例えば、服のブランドをいろいろ知ってたりしても、結局ちゃんとその人に似合う感じに着れてないと、かっこよくないですもんね。かっこよく着れてる人ってやっぱセンスいいんで、チョイスが自分に似合ったものをってところからセンスなんですよね・・・。なんかちょっと、一番気をつけようって思いました 。うん、バランス。今の話で。

屋敷:僕も、まだまだ勉強中です・・・

最後に、二人が考える「bird and insect」のメンバーとして意識している「役割」についてお聞きしたいです。

杉浦:そうですね〜。コピーライターとして意識してることがいくつかあるんですけど…。ひとつは、いわゆる広告クリエイターのトップ戦線で活躍している人たちの制作物をチェックしたり意識することですかね。そのために広告賞やコンペに出すことは、ずっと続けていますし、同世代のクリエイターが必ず出しているような賞には、なんとか毎年ファイナリストに残ったり、ときどき入賞したり、頑張っています。そういうモチベーションを保っていくための意識が、まずひとつ。
もうひとつは、「bird and insectのコピーライター」っていう肩書きを、外部に対してどう自己ブランディングしていこうかな〜ってところです。僕が入社する前は、会社のみんながとてもかっこよく見えてたので、なんというか「bird and insectのコピーライターさん」っていう存在を、会社イメージのマイナスにならないよう気をつけたいなって考えたりしますね。笑

屋敷:わかるわかる!笑 うちらさ、多分birdに入る前は空気が澱んでいたところにいた組だからね(勝手に決めつける笑)

杉浦:考えますよね!(ん?そんなに澱んでたっけ…まあええわ…)
birdメンバーとしての自分というか、空気が澄んでる感じでいようとか。

屋敷:具体的に言うと、ツイートしようとしたとき「あ・・これツイートするのやめておこう、bird色じゃないわ・・・」みたいな。笑 もっと色んなことつぶやきたいけどね。笑

杉浦:そうそう!!笑 あと真面目な話に戻すと、bird and insect はビジュアルにこだわる会社だから「いい言葉」を考えることに加えて、テキストの「収まりがいいか」だったり「目で読みやすいか」ってことは、より意識するようになりました。素晴らしい映像・写真の中で、コピーが雑音にならないようにしたいな〜と。

屋敷:なるほど、なるほど。

杉浦:ビジュアルが漫才で言うところのボケなら、それを補足して伝わるものにしないといけないから、コピーはツッコミだ!みたいな。以前、HPの journal でも、そういう話を書きました。(https://bird-and-insect.com/journal/2486/)

屋敷:そう!動画って、いざ撮ってみたら、いざ構成してみたら、ビジュアルだけじゃ伝えたいことが表現できてない!ってときに、コピーの力で完璧に伝わるものになるっていうか。とある案件でね、動画だけだと表現しきれなくて、自分の作りたい企画とかだけが先行しちゃって、いざ動画にしたら、あんま表現できてないな〜と思って。だからあの時はコピーがなかったらbirdもクライアントさんも不完全燃焼で終わってたと思う・・

杉浦:・・・おお!笑 それはなんか嬉しいですね。

屋敷:っていうのはめちゃめちゃ思った。特に、あの企画は台詞もなかったしナレーションもなかったから。

杉浦:分かりにくいと、なんか眠たくなっちゃうし、だからわかりやすくしないといけないな、これは。みたいな、そういう本能的な勘というか、観てられるものにしなきゃいけない!っていう気持ちになるんですよね。

屋敷:うんうん。あの時の杉浦くんの行動は素晴らしかったなぁ。

杉浦:そういえば、中途入社の面接の時、僕すごい失礼なこと言いましたよね。御社の実績を見る限り「コピーとして機能してるものがほとんどない」みたいなことを意気揚々と。笑

屋敷:なつかしい・・・笑笑笑

杉浦:阿部さんと屋敷さんが面接で、「今なんかコピーチョロチョロ載ってるやつありますけど誰が書いてるんですか?」って言ったら、阿部さんが「僕が書いてます(ドヤ)」って言って、「コピーとして機能しているものが、、正直、あまり、なんか、、ないですね!(ドーン!!!)」みたいな。笑

一同:wwwww

杉浦:足しても意味を成さないのなら雑音なので、最終的にコピーがなくなるっていう判断になってもいいと思っています。なんなら、それも判断しなきゃいけないんじゃないかなって。少しでも伝わりやすさにブーストをかけてあげられてないと、無意味なんじゃないかなと思うんです。

屋敷:ごもっともだね。ちょっと恥ずかしくなってきた。笑

屋敷さんはどうですか?birdのディレクターの役割について。

屋敷:そうだね〜・・・なんだろうなあ。これはちょっとbird and insect 的に正しいのかわからないけど、「自分たちが作りたいものだけを押し付けない」っていう考えはディレクターとしてかなり心がけてるかなと。

杉浦:うんうん。

屋敷:クライアントさんを無視して提案するっていうことはほぼしないようにしてる。それがbird and insectのディレクターとして意識してる役割ですかね。あとはクライアントさんの思いもそうですが、同時にエンドユーザー・お客さん・動画を見る人の現実的な視点はかなり気にしている。そういうところで最初に話した「ぶっちゃけこう思う」みたいなことを視聴者に思われないような企画や演出を心がけなきゃと考えてますね。

よく屋敷さん「自分はアート的なディレクターではない」って言ってますよね。

屋敷:アート的な文脈や要素を取り入れる表現というのはかっこいいんですけど、それだけやっていても意味のないものができあがってしまうというか。クリエイティブ業界では話題になるけれど、クライアントにとってのエンドユーザーには全然響かなかったりするので・・なのでクライアントさんが言う現実的な意見にもちゃんと理解をして、その上で面白い企画をつくって納得してもらうっていう仕事をするのが使命ですかね。あとは元々接客業出身ということもあって、クライアントさんと話すのが好きだったりするので、現場でディレクターやるだけでなく、お客さんに気持ちよく現場に居てもらうこととかもよく考えたりはしますね。
反対に自分の映画とか作品作りは、突拍子もないもの作ったりとかしたいかなっていうのはありますね。そんなに作品をつくってるって訳でもないけど、まだ世に出せない内容だけど、今書いている脚本は誰にでも簡単に見せられる内容じゃなかったりするしね。例えばコロナ禍ってさ、最悪なことではあるんだけど、ちょっといい方向に進んだこととか、良かったことてあるじゃない?もしかしたら、幸せを生み出したことも少しはあるかもしれないと思うんだよね。あまり声を大にして言えないけどさ。

杉浦:めっちゃわかりますよ。リモート環境が整ったとか。加速したっていうか、「オフラインで会社に来い」って言われたら「えぇ〜」って、いまは心の底から思うじゃないですか。そういう価値観になったり、あとは「誰かと会う」ことを改めて考えよう、みたいな。

屋敷:そうそう。仕事はクライアントさんの”喜び”みたいなものを感じて、個人的な作品作りは吐き出すがままにつくりたい感じ。それが仕事のモチベーションにもつながるから、bird and insectのディレクターとしての役割も果たせて、サイクルが回っている感じですね。

杉浦:なるほどですね。自分の作品作りで言うと、僕は週1回「1DAY IDEA」っていうSNSアカウント(https://www.instagram.com/1day_idea/) を更新しています。僕が主にアイデアを考えて、デザイナーの相方がイラストに起こしてくれて投稿しているのですが、「やりたい放題」な作品ってことではなく、広告クリエイティブ的な文脈の中で面白いことだけを抽出してやっているんですよね。上司もいないし、クライアントもいない。再考もないし 、すべて一発で終わらせるっていう。もし反応悪かったら「しょうがないね」って次に行く。反応が良かったら「へぇ、こんなのウケるんだ」みたいな感じで。煩わしさを感じず、仕事以外にも個人的に、つくりたいものをつくることって、クリエイターとしては大事な行為だと思いますね。

屋敷:そういうね、利害どうこうじゃなく表現したいこととかさ、表面だけじゃなくて裏面を意識したりね、知っておかないと、いざ仕事になったとき、いいクリエイティブって生まれないんじゃないかなぁって、思います。

杉浦:キレイゴトばっかりじゃだめですよね。笑

屋敷:カタチのないとこからカタチにする人って、割と捻くれてる人が多い気がするからさ。俺と杉浦くんは、いわゆる真面目な人間ではないよね〜。小川くんはどうなんだろうね。笑

杉浦:小川くんメインの回も楽しみですね。(根掘り葉掘り聞いてやるぜ…)
ともあれ、二人とも個人的な作品づくりにおいて意識してる視点が、間違いなくクライアントワークでも活かされていますよね。

屋敷:それが、僕たちの共通点だったわけですね。bird and insect のディレクター or コピーライターとして役割を担っていく上で、仕事も個人的な作品づくりも、バランス良くやっていきましょう。という。

杉浦:そうですね!まとめ、ありがとうございました。

屋敷:ありがとうございました!お疲れさまでした!

 

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取材:小川綱太
撮影:阿部大輔

 

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